スマートフォンは毎年劇的に進化するわけではない。しかし、「Pixel 10a」ほどそれが当てはまる例もなかなかないだろう。
これまでの「aシリーズ」の流れを破り、グーグルの新たな中価格帯デバイスは、昨年の「Pixel 9a」とほぼ同一の仕様だ。昨秋の「Pixel 10」で初登場したTensor G5ではなく、前世代機と同じTensor G4チップを採用している。
なぜこうなったのか。グーグルの公式見解は、その499ドル(約7万7,000円)という価格を維持するためにトレードオフが必要だったというものだが、具体的な説明はない。新しいチップセットや目立ったアップグレードが見送られた背景には、業界全体で価格高騰を招いているメモリ(RAM)の急激なコスト上昇がある可能性がある。ただし、グーグルは具体的な根拠を示していない。
それでもPixel 10aは、中価格帯のスマートフォンの中では依然として有力な選択肢であり続けるだろう。Pixel 10aの米国での正式発売は3月5日からとなる(日本での発売も予定されている)。またグーグルは、このスマートフォンに合わせて、ワイヤレスイヤフォンの「Pixel Buds 2a」に新色の「Berry」と「Fog」を追加すると発表した。以下に知っておくべきポイントをまとめよう。
“ほぼ同じ”という新しさ
Pixel 9aとPixel 10aを見比べると、間違い探しをしている気分になるはずだ。外観上の変更点はわずかにふたつ。Pixel 10aでは、Pixel 9aの背面カメラモジュールを囲んでいた小さなプラスチック製のリングがなくなり、今年のモデルはさらにフラットな見た目になった。グーグルによると、カメラの出っ張りが目立たないデザインがPixel 9aで好評だったため、今回はその路線をさらに推し進めたという。前面では、6.3インチディスプレイを囲む黒いベゼルがわずかに細く、より均一になり、全体としてまとまりのある印象になっている。
これがPixel 10aに施された改良の本質だ。プラスチック素材の有機EL(pOLED)ディスプレイはほぼ同一だが、ピーク輝度は9aの2,700ニトに対し、10aでは3,000ニトに向上している。ディスプレイを覆うガラスも、旧来のGorilla Glass 3ではなく、より耐傷性の高いCorning Gorilla Glass 7iに変更された。
バッテリー容量は5,100mAhのままだが、有線充電は30W、ワイヤレス充電は10Wへと充電速度が引き上げられた。一方で、グーグルはフラッグシップのPixel 10シリーズで導入したPixelsnapと呼ばれるQi2ワイヤレス充電を、Pixel 10aには採用しなかった。一方、数週間以内に発表される見込みの「iPhone 17e」は、噂では「iPhone 16e」とは異なりMagSafe/Qi2に対応するとされており、価格は高くなる可能性があるものの、この点ではグーグルの端末より有利になりそうだ。
| スペック: Pixel 10a (2026) | Pixel 9a (2025) |
|---|---|
| ディスプレイ:6.3インチ、60~120Hz、最大3,000ニト、pOLED | 6.3インチ、60~120Hz、最大2,700ニト、pOLED |
| カバーガラス:Corning Gorilla Glass 7i | Corning Gorilla Glass 3 |
| プロセッサー/RAM:Google Tensor G4+8GB | 同じ |
| ストレージ:128GBまたは256GB | 同じ |
| バッテリー:5,100mAh(有線30W、無線10W) | 5,100mAh(有線23W、無線7.5W) |
| カメラ:48MPメイン、13MP超広角、13MPフロント | 同じ |
| 発売後のソフトウェアサポート:7年間 | 同じ |
| 新機能:カメラコーチ、オートベストテイク、マクロフォーカス、衛星SOS | なし |
| その他:IP68、防水防塵、指紋認証、Wi-Fi 6E、NFC | 同じ |
| カラー:Obsidian、Fog、Lavender、Berry | Obsidian, Porcelain, Iris, Peony |
| 価格:499ドル | 499ドル |
バッテリーに関しては、Pixel 10シリーズで導入された「プルジャケット(pull jacket)」と呼ばれる新しい仕組みが採用されている。これにより、タブを引っ張るだけでバッテリー固定用の接着剤をより簡単に剥がせるようになったという。またPixel 9aと同様に、一定回数の充電サイクルを超えると最大電圧を下げてバッテリー寿命を延ばす「バッテリーヘルスアシスタント」機能も標準搭載されている。これは、過去のPixel aシリーズで過熱問題が見つかったことを受けて開発された仕組みだ。
Pixel 10aは前モデル同様、最新規格のWi-Fi 7ではなくWi-Fi 6Eまでの対応にとどまっているが、新しいモデムが追加され、衛星SOSに対応した。これにより、Wi-Fiや携帯電波が��かない状況でも、緊急サービスと通信できるようになった。
グーグルによると、Pixel 10aは「aシリーズ史上もっともリサイクル素材を多く使用したモデル」だという。コバルト、銅、金、タングステンといった再生素材が初めて使われている(なお、アップルはすでに数年前からこれらの再生素材を採用している)。アルミフレームは100%再生素材で、背面は81%が再生プラスチックだ。
ハードウェア面の変更点は、おおむね以上だ。本体カラーはObsidian、Fog、Lavender、Berryの4色展開で、Berryは2025年後半にグーグルが発表した新しい「Nest」製品のカラーに合わせたものだ。
ソフトウェア面のアップグレード
グーグル自身も、Pixel 10aのアップグレードが控えめであることは把握している。そのためPixel 10向けのソフトウェア機能である「カメラコーチ」や「オートベストテイク」などを一部移植している。ただし、両機種は同じTensor G4チップと8GBのRAMを搭載しているにもかかわらず、これらの機能はPixel 9aには(少なくとも現時点では)提供されていない。グーグルは新機種向けにいくつかの機能をあえて出し渋り、その後Pixel Dropと呼ばれるソフトウェアアップデートで旧モデルにも展開することが多いが、今回もそうなるかどうかについては明言していない。
カメラコーチはカメラアプリ内でシーンを解析し、よりいい写真を撮るためのアドバイスを提示する機能だ。オートベストテイクは集合写真向けで、シャッターを押すと複数枚を連写し、目を閉じていない・笑顔のフレームを自動的に選んで合成してくれる。また、Google フォトではGeminiを活用した、話しかけるだけで写真編集ができる新しい対話型フォトエディタも利用できる。なお、Pixel 9aからカメラのハードウェア自体に変更はない。
Pixel 10と同様に、Pixel 10aはグーグルのQuick Share機能を通じてアップルのAirDropと連携でき、iPhoneを使っている友人とも写真やファイルを簡単に共有できる。さらにGemini関連の機能も多数搭載されており、グーグルはこの端末に対して7年間のソフトウェアアップデートを提供すると約束している。
グーグルのaシリーズはこれまで、実用的で賢いソフトウェアと安定した性能のハードウェアを競争力のある価格で提供し、評価を高めてきたラインだ。今年のモデルはそのなかでもやや物足りない部類に入るだろう。それでも10万円超のスマートフォンには手を出したくない人にとっては、有力な選択肢のひとつであることに変わりはない(実機レビューは後日改めて実施予定)。今回の控えめな進化は、メモリ価格高騰などの“メモリ危機”の影響で、価格維持のために各社がアップグレードを妥協せざるを得なくなっている兆しかもしれない。
朗報として、グーグルはPixel 9aの販売を継続すると明言している。ただし価格は販売店によって異なる。Google Storeでの即時値下げはあまり期待できないものの、今後数カ月以内にサードパーティ小売店ではPixel 9aが大幅に値下がりする可能性が高い。その場合、ほぼ同等スペックの後継機であるPixel 10aよりも、さらに“お買い得”な選択肢になるだろう。
(Originally published on wired.com, translated by Miranda Remington, edited by Mamiko Nakano)
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